かき氷やアイスなど冷たいものを食べたとき、頭がキーン!という「頭痛」を経験した事ありませんか?
「かき氷頭痛」と言えそうですが、極端に冷たいものを食べた直後に誘発される頭痛は「アイスクリーム頭痛(ice-cream headache)」と言う正式な病名です。
アイスクリーム頭痛
以前は「アイスクリーム頭痛」という病名として使用されていましたが、国際頭痛学会から公開の「国際頭痛分類第3版β版」では「アイスクリーム頭痛」は「以前使われていた名称」となっています。
現在では「寒冷刺激による頭痛」です。
さらに、分類されて「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」という診断名になっており、特に病変の見られない頭痛の一種に分類されています。
特長
アイスクリームやかき氷などに限らず、冷たいものには、固体・液体・気体などがあります。
口腔や咽頭(のど)を通過することによって急速に誘発されると定義されている頭痛の一つです。
この頭痛は非拍動性(周期的ではない)で、鼻の付け根の奥、眼の奥、こめかみから、頭部、後頭部などで痛みが誘発します。
口の中の上側や喉の奥など、刺激を感じる場所によって頭痛が起こる場所も変わります。
「圧迫するような痛み」「突き刺すような痛み」「脈打つ痛み」など痛みの強さや症状も個人差が大きく一般的には、30秒から60秒程度で頭痛が誘発され、5分以内で刺激が消え痛みが収まります。
この痛みは片頭痛持ちに起こりやすいというデータがありますが、他の疾病との関連性は認められていません。
解明は進んでいない
この症状に対する研究は多いのですが、あまり熱心に研究されている頭痛ではないようです。
理由は、頭痛発生時間が短いので調査する時間がないことや、健康に影響を与えるような頭痛のものではないため取り組む研究者が少ないと言われています。
頭痛の原因
発症メカニズムの解明は進んでいないのですが頭痛の原因としては2説が唱えられています。
まず刺激を代表する神経として
三叉神経(さんさしんけい)
頭、頬、喉の3方向に分かれている脳神経の一つ
三叉とは
「眼神経」の前頭部や眼、鼻の周囲、
「上顎(じょうがく)神経」の上あご全体、
「下顎(かがく)神経」の下あご全体の三神経で、前頭部から口の周辺まで広い領域の感覚を担っています。
舌咽神経(ぜついんしんけい)
舌と咽頭に分布する脳神経の一つで、舌の後ろ3分の1から耳にかけての感覚を担っています。
1.情報伝達の勘違い説
「冷たい感覚」と「痛い感覚」は似ていて温度覚(熱さ、冷たさ)と痛覚(痛さ)が同じ神経を伝って脳に刺激を伝えますが、冷たい刺激が強すぎると「冷たいという感覚」と「痛いという感覚」とを混同し温痛覚の勘違いが生じるというものです。
冷たいものが口に入ると三叉神経や舌咽神経が刺激され冷たいという感覚を脳に伝えます。
本来なら「冷たい」という情報だけが脳に伝わるはずですが、過剰な「冷たさ」の刺激によりこれら神経の伝達に混乱が生じて感覚が正しく脳に伝達されず「冷たさ」を「痛み」として錯覚してしまう勘違いから頭痛を感じるというものです。
“冷たい→痛いと誤認”
更に、口の中の感覚のはずなのに頭の中と誤認して頭痛を感じ、痛みの部位が勘違いしているということになります。
通常は、「異なった種類の感覚」と「異なった出現部位」はそれぞれ識別されて脳に伝わっていくのですが、これは「関連痛(かんれんつう)」と呼ばれる現象で「痛みの原因となる部分」と「実際に痛みを感じている部分」が異なるのです。
“口の中→頭の中と誤認”
例えば内臓疾患の場合、皮膚に痛みを感じることがあり耳・鼻・歯などの疾患による、頭に痛みをともなうことも少なくありません。
2.血管の炎症説
喉元が急激に冷やされると、近い位置にある頚動脈(けいどうみゃく)も急速に冷却されて血管が縮みます。
身体は体温を維持しようと血流を一時的に増大させ収縮した血管は逆に伸びようとします。
血管の急速な収縮と拡張によりその際、血管周囲にある「三叉神経」が刺激を受け様々な神経伝達物質が分泌され、結果、血管が広がりその周囲に一時的に軽い炎症が発生し頭痛が起こると考えられています。
“炎症→痛みと誤認”
要するに急激な冷たさが痛みに変換され脳に伝わって起きる頭痛と言えます。
この炎症説は偏頭痛のメカニズムと同じく血管の拡張と炎症の関連性が推測されていますので片頭痛患者ではアイスクリーム頭痛が多いという論文があります。
2つのメカニズムのどちらか、または両方が原因となって、アイスクリーム頭痛が起きると考えられています。
イオンチャンネルの新知見
温度変化を感知できるイオンとの関連性が注目されています。
私たちの細胞膜にはイオンの通り道となる「イオンチャンネル」と呼ばれるタンパク質が存在します。
細胞に備わった情報伝達機構の一種で、外界からの刺激に応じて開閉(細胞でのイオンの流出入)しイオンを透過させる経路(チャネル)がイオンチャンネルです。
温度変化を感知できると考えられていて、細胞の電気的活動などを担いイオンを透過させて、情報伝達を行います。
皮膚などからの寒冷刺激も感知し冷たいという刺激情報を伝達する役割を担い、イオンが関わる生理機能に深く関与しているようです。
誰にでも起こる現象なのか
多くの方はアイスクリーム頭痛を経験されているものと思われますが、全く頭痛が起こらない人もいれば逆に、強い頭痛が出てしまう人もいます。
中にはアイスクリームは大丈夫だけど、かき氷では頭痛が起こる人もいますし、氷の塊(アイスキューブ)より氷水(アイスウォーター)の方が頭痛が起こし易いとの報告もあり個人差が大きいです。
この差は食べた時に「すぐ飲み込むか」「飲み込まないか」 という事を某TVで紹介されたようですが、人それぞれの閾値(いきち)の差や
(閾値とは、生体の感覚が刺激によって平常状態から興奮状態へ反応しますが、その刺激を引き起こすのに必要な刺激の最小値。反応するか、しないかのレベル値のことで、どの程度アイスクリームを食べると頭痛が起こるのかということになります。)
その時の気温・湿度、状況や体調、体質や感受性の違いなど様々な諸説によって人それぞれ異なると思います。
予防法
アイスクリーム頭痛には遺伝的素因があることが明らかにされています。
実際に具体的な対策・予防法はないのですが、急いで冷たいものを食べると頭痛を起こしやすい訳ですから一番確実な方法は冷たいものを避けることです。
が、
〇冷たいものは一気に食べないで上あごや喉の入り口部分に当たらないように、ゆっくり時間をかけて食べることで起こりにくくなります。
〇暑いところで起こりやすいとか湿度が関与しているとも言われ「暑い場所で」「急激に冷たいものを食べる」という2つの条件が重なることも原因とされており、あまり暑くない場所で食べるなどすれば、頭痛が起きにくいと考えられています。
〇冷たいものを食べる前にあらかじめ温かいお茶などで口腔内温度を温めておきます。
または逆説には、あらかじめ水などを飲んで口腔内温度を冷やしておくと予防できるとも言われています。
口腔内の温度差に関係するわけですが、個人差による感受性の違いなど人それぞれであるように思われます。
対処法
予防策同様、医学的に証明されているものではありませんが頭痛が起きたら
〇おでこやこめかみを冷やすと、炎症が起こっているという錯覚も抑えらまた、拡張した血管が元に戻って痛みが緩和します。
〇口蓋(口の中の上の部分)に舌をあてて、口の中を温めることで痛みが緩和されます。
〇口の中を温かい飲み物などで温度を上げることで脳が温かさを感じ、血流量が調整されて元に戻ろうとすることで痛みが緩和されます。
最後に
人間が感じる様々な「痛み」は体の中にある神経を伝わって脳が感じています。
しかし、脳自体は痛みを感じることはありません。
なぜなら脳自体に痛みを感じるセンサーがないからです。
痛いのは脳自身ではなくて血管や筋肉や硬膜が痛みを起こしています。
痛みは何らかの刺激に対して身体が反応している状態で、私たちの体に異常が起きていることを知らせる重要な感覚で、身体が正常ではないことを知らせるサインとしてとらえる事が出来ます。
痛みがどのような刺激によって出現しているのかをよく診察する必要がありますが、アイスクリーム頭痛は健康に影響を与えるような頭痛ではないという事です。
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