プリンセス駅伝とは、愛称「プリンセス駅伝in宗像・福津」と呼ばれ、実業団女子日本一決定戦への出場を賭けた一度限りの全国統一予選会です。
実業団日本一決定戦は例年11月に開催される「全日本実業団対抗女子駅伝競走大会」で愛称「クイーンズin宮城」です。
岡本春美のアクシデント脱水症蛇行
10月21日に開催されたプリンセス駅伝でトラブル続出が、波紋を呼んでいます。
一つは、岩谷産業の第2区(3.6km)を走る、飯田怜は転倒し“四つん這い”の状態でタスキつないだものの、右脛骨(けいこつ)骨折で全治3~4ヶ月。
◇飯田怜選手のアクシデントは
↓
飯田怜・四つん這い編
もう一つは、三井住友海上の第3区(10.7km)先頭を走っていたエース、岡本春美は入社2年目の20歳。
岡本春美は脱水症状のため、残り1kmで意識朦朧として蛇行や逆走までしてしまい沿道に倒れこみ、なかなか救出されずに途中棄権。
どちらも衝撃的な危険を感じる走行であり、過去にも脱水症によるリタイアはありましたが見るに耐えない駅伝となってしまいました。
ここでは、三井住友海上の岡本春美選手を見ていきましょう。
三井住友海上の第3区(10.7km)を走る岡本春美
3区は10.7kmの最長区間であす。
34:19:22
第2中継所で、
三井住友海上の岡本春美が3位でタスキを受け取る。
その後、2区の岩谷産業、飯田怜のアクシデントによりトップ争いの中継画像が映らない。
39:00
飯田をクローズアップしていた画面に突如、小さな画面が映し出され、岡本春美がトップ争いを展開していた。
39:52
岩谷産業のタスキがつながり
40:48
ようやく先頭集団の実況が始まる。すでに岡本がトップになっていたが、1号車のトップカメラよりサブカメラの飯田怜を実況し続けたのは中継として問題だろう。
59:57
実況
「しかしこの力強いフォームというのはまったくかわりません。」 と、岡本の走行姿勢を伝えている。
1:00:14
実況
「自分で支配するようなレースになってます。」 と絶賛していた。
1:03:40
岡本は、残り2キロを過ぎて、少し蛇行しているような感じで真っ直ぐに走れていないような気がする。
1:05:10
どうも腕の振りもいつもと違うように思える。
1:05:23
絶賛から約5分後、突然、身体は右を向いて
南未波
1:05:28
逆走Uターンして
前に走り直すも蛇行している。
中継所まで残り1.35キロだ。
1:05:30
どうみても様子が異変なのに実況は
「ちょっとコース間違えましたか?」 と呑気な実況。
1:05:38
実況
「あぁーフラフラしている!蛇行し始めました。」
「真っ直ぐ走れなくなりました!」と語り続く。
1:06:08
またもや右に旋回し、逆送して行き大きくUターン走行し、現2位となる。
1:06:22
審判員から渡された給水ボトルをかろうじて受け取る。
1:06:26
受け取った給水ボトルを口に含み朦朧と立ち止まった。
1:06:32
実況
「意識がない」 とまで言っている。
1:06:39
給水ボトルは落ちてしまったのか、落としたのかは定かではないが審判員が横につきながらフラフラ歩き出し現順位は3位と落ちた。
1:06:45
それでも走り出した。
審判員も一緒に給水ボトルを持ちながら後を着いて14秒程走っていた。
沿道からは、悲鳴と拍手の音が聞こえ
「頑張れー頑張れー」 の声も・・・
悪気はなくともこの時の「がんばれー」 は悲しい・・
1:07:17
折り返し地点のコーンを回らず倒れそうになりながら進み始めてしまった。
1:07:39
今一度コーンまで戻るよう促される。
解説者は
「こういう状況は心配です。意識がないなかで後ろに倒れたりすると危ないので止めて頂いた方が良い」 と言っている。
1:08:05
コーンを回り7位と後退した。
1:09:36
転倒しながらも走り出す。
1:09:58
審判にもしくは監督によって止められそして沿道の草むらに倒れた。
1:11:04
係員に抱きかかえられその後、救急車で運ばれたようだ。
プリンセス駅伝名門チームの影
三井住友海上陸上部は、1992年に創部。
チームはクイーンズ駅伝に、2017年まで24年連続24回の出場を果たしており、女子駅伝においては名門チームです。
背景にはエース岡本春美選手の活躍に大きな期待が寄せられていたことと、2017年のクイーンズ駅伝での順位がシード圏内ではなかったため、この予選会のプリンセス駅伝で、14位以内に入ることが必須条件であった内情が伺えます。
チーム側は、岡本選手があと残りわずかでトップだっただけに決心できないでいたと思われます。
しかし飯田怜選手のときとは異なり、岡本選手は意識がほとんどない状態、身体の自由が利かない状態、異常で危険な走行だったことを考えると倒れることや命の危険は予測できたと思います。
頭部から転倒していたらどうなっただろう、脱水症状なら尚更、後遺症が残る可能性もあり選手生命が終わってしまったらどうするつもりなのか、もっと早い段階で棄権させるべきアクシデントだったと思います。
大会運営の安全管理体制に対する批判の声が多く上がっていますが、チーム側もアクシデント時のマニュアルが必要ではないでしょうか・・・
タスキが駅伝
駅伝の悪い部分が出てしまいましたが、実業団の選手となれば「走る」ことが仕事であり、会社をアピールする役割を担い、結果を残すことが重要ですが自分の身を削ってまで倒れるまで走る事は重要なのでしょうか?
選手の前に社員であり、社員の前に人間であるようにチームのために身体を壊してでも行動することが本当にチームのためになるのか、そこまで会社に貢献する必要はあるのでしょうか?
特異なるチーム構成から成り立つ駅伝の性質で強化合宿をしたりして、仲間意識も強くなりレースに出れない人の気持ちも背負い、目標に向かって練習してきた大切な1年間の思い。
ましてや自分のところでタスキが途絶えたら「苦しいことも一緒にやってきて私がリタイヤしたらチームの成績がなくなる、その仲間と1年間頑張った思いや努力は何だったのか?」「頑張った1年間が終わってしまう。」と、身体がそう覚えている・・・
その当時の日、数十分、数時間に賭けるの思いは計り知れないもので何故、選手は諦めずに走り続けるのか?
答えはタスキを渡した時、その瞬間のそこにしかなく、必死にタスキを繋いだという事実です。
それこれがチームでつないでいく責任感、チーム勝利へのプレッシャーが重くのしかかる「駅伝」の正体であり駅伝のタスキ、つなぐタスキの重さは走った人にしか分からないものでありタスキがつながらないと駅伝でなくなるのです。
岡本選手にしても走れる限り走りたかったはずで、でも駅伝に限らず、他の競技も同じで、試合に勝つために日々努力、鍛錬し研究しているわけで厳しい練習に耐え弱音を吐かない勝負の世界では未だにそのようなド根性精神が根強くあるのではないでしょうか。
時代の経過とともに指導の在り方も科学的な根拠や論理に基づいて新しい価値観を受け入れるようになりましたが、勝利への情熱はいつの時代でもあるようです。
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