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【暑さ寒さも彼岸まで】の意味や由来、日本だけの古来独自の風習の話

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暑さ寒さも彼岸まで

(あつささむさもひがんまで)

「冬の寒さは、春分の頃まで

 夏の暑さは、秋分の頃までには和らいで、

 凌ぎ(しのぎ)やすくなる」という意味で

日本人の季節に対する感覚を表現した慣用句です。

彼岸(ひがん)にあたる

「春分の日」や「秋分の日」を境に、

それまでの寒さや暑さが次第に落ち着き

過ごしやすい日々になるということです。

「暑さ寒さも彼岸まで」は

日本独自の風習でした。

言語由来

「暑い寒いも彼岸まで」

「暑い寒いも彼岸ぎり 」

「暑さの果ても彼岸ぎり寒さの果ても彼岸ぎり 」など

同様の句もあります。

1年のうち、

特別な日が2回あります。

「春分の日」と「秋分の日」で

太陽が丁度赤道上になり

昼と夜の長さがほぼ同じになり

太陽が真東から昇り、真西に沈む日です。

春分以降は

太陽の出ている時間(昼間)が長くなって

寒さが和らぎ暖かくなり

秋分以降は

太陽の出ている時間(昼間)が短くなって

暑さが和らぎ涼しくなります。

春分の日、秋分の日を境に季節が折り返され

1年中でもっともよい季節となり

冬の寒さや夏の暑さの目処(めど)がつき

この時期が「彼岸」にあたりますから

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるようになったようです。

彼岸の行事は

聖徳太子の時代に始まったと言われていますが

明確なものがありません。

彼岸のはじまりを示す

記録に残っている初出は

平安時代初期に編纂された歴史書の

「日本後記」(にほんこうき)」に

西暦806年(大同元年)3月

「奉爲崇道天皇。令諸国国分寺僧春秋二仲月別七日。讀金剛般若經。」

とあり

「崩御した崇道天皇の供養の為に 諸国の国分寺の僧を集め命じて

 春秋二季の7日間 金剛般若経を読ませる」と

朝廷で法要をしたことが記されています。

少なくとも平安時代の初期から

すでに彼岸が年中行事になっていたと言えます。

「暑さ寒さも彼岸まで」の

ことわざとしての文献上の初出は

江戸時代後期の儒学者である

太田全斎(おおたぜんさい)の

「諺苑(げんえん)」(1797年)という

江戸時代の国語辞書に記述があることから

平安時代の貴族の文化が徐々に

江戸時代になって一般庶民の文化として

彼岸の仏事が広まった事を伺い知る事ができます。

もう一つには

農耕民族である日本人の「春」と「秋」は、

春分の頃に豊作を祈り種をまき

秋分の頃に感謝を捧げ収穫するという

季節の区切りとしての農耕の目安でもあり

収穫は生きるために欠かせないものです。

お日様に願い、

自然に対する感謝の気持ちや祈りを大切にし

太陽を始め、様々な「神」を崇拝し

祈りが最も通じやすくなる日と考えた

重要な日でもありました。

もう一つの意味

「暑さ寒さも彼岸まで」の

彼岸という言葉を仏教的に考えると

もう少し違った深い意味になります。

仏教でいう彼岸は、

「悟りの境地に達した世界」「向こう岸」ですから

暑さも寒さも苦しみもすべてこの世まで、

この世に生きている間だけのものであり

向こう岸である悟りの境地に達すれば

暑さも寒さも苦しみも悩みも

一切なくなるという意味にもなるわけです・・・

彼岸

「お盆」は、ご先祖様をお迎えしてお送りますが

「お彼岸」は、こちらからご先祖様へ歩み寄る行為で

年に2回、春彼岸と秋彼岸があります。

春分の日(3月21日頃)、

秋分の日(9月23日頃)を中日(ちゅうにち)として

その前後の3日を合わせた7日間が彼岸の時期です。

地球が太陽のまわりを回る日数の誤差により

その年によって日付が変化します。

【春彼岸】

 春分の日が3月21日の場合

  3月18日:彼岸入り

  3月21日:彼岸の中日(春分の日)

  3月24日:彼岸明け

【秋彼岸】

 秋分の日が9月23日の場合

  9月20日:彼岸入り

  9月23日:彼岸の中日(秋分の日)

  9月26日:彼岸明け

【代表的なお供え】

 春の彼岸・・・春に咲く牡丹にちなんで

  牡丹餅(ぼたもち)のこしあん

 秋の彼岸・・・秋に咲く萩にちなんで

  お萩(おはぎ)の粒あん

「彼岸」という言葉は仏教用語ですが

本来は

仏の教えを実践する期間です。

やがて彼岸の行事は、

お墓参りをする祖先供養の行事へと

今でこそ、趣旨が変わって定着していますが

実は

日本で生まれた習慣で日本にしかない独自のものです。

仏教の行事であるものの

他の仏教国では「彼岸」という風習はありませんので

「暑さ寒さも彼岸まで」という言い方も、日本ならではです。

最後に

「暑さ寒さも彼岸まで」の

意味を転じて、

「辛いこともいずれ時期が来れば去っていく」という

意味で用いられることもあります。

「厳しい自然を耐え忍んでいれば徐々に和らいでくるから

 暑さ寒さも、もう少しだから我慢しよう」のように

「どんなに困難なつらい事でも、時が経てば、

 乗り越えることができる」という

自然には太刀打ちできない、切なさが

自然に寄り添う暮らしの中で希望を見い出した

「先人の励まし」のように感じる言葉です。

自然をたたえ

自然の恵みに感謝する気持ちから

ご先祖様を大切に敬う行為に繋がってきた

「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉だと思います。

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